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2011.03.05 (土)

「 毎年10万件の暴動が起きる中国 胡主席が幹部に強調した規制徹底 」

『週刊ダイヤモンド』   2011年3月5日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 877

中国では毎年10万件の暴動が発生している。一般国民の不満や訴えが、毎日約300件、爆発し続けているのだ。なんと不幸な国家だろうか。それでも、中国共産党は国民の怒りが昂じて、反政府運動に発展しないよう、巧妙に処理してきた。不満や怒りを手っ取り早く抑制するために、中国政府は反日運動を利用し、情報も日常的に規制してきた。それでも足りないとき、彼らには奥の手がある。1989年6月、天安門広場に集まった学生や国民に戦車を繰り出し数百人を殺して鎮圧した。人民解放軍こそ中国共産党統治を支える最終手段だ。

チュニジア、エジプト、リビア、他のアラブ諸国へと広がりつつある国民蜂起を前に、中国共産党首脳部は眠れぬ夜を過ごしていることだろう。2月19日、中国共産党中央総書記、国家主席、中央軍事委員会主席の胡錦濤氏が共産党の幹部教育機関である中央党学校で重要演説を行った。その席には胡主席を含む常務委員会(内閣)のメンバー9人が勢揃いした。

胡主席は、緊急に幹部を集めたのは、「国内外情勢の新たな変化と特色を正しくとらえることが目的」だと説明した。口には出していないが中東の動きを念頭に置いた発言だ。そのうえで取るべき政策は、「社会管理の強化・革新と新しい情勢の下での大衆工作」だと述べた。中国のように「13億の人口を擁し、経済社会が急速に発展している国では、社会管理の任務はより難しく重い」として、「思想・道徳づくりを一段と強化、改善し、社会主義精神文明建設をうまずたゆまず強化し、社会全体の法秩序意識を強めていく」ことが重要だと強調した。つまり、情報管理と規制をより徹底させるというのだ。

中国ではこのときすでに、インターネットで中国共産党の一党独裁打倒などを求める集会が呼びかけられていた。そうした「危険な動き」を十二分に把握ずみの当局は、胡主席の重要演説当日の夜、民主運動関係者らに、20日(日曜日)の外出を控えるよう警告し、数知れぬ警官が主な運動家らの自宅を取り囲み、軟禁した。

それでも翌20日には、13の都市で数十人から数百人がデモをした。小規模なデモである。しかし、この小さな一歩には大きく深い意味がある。

胡主席が「小康社会」(少しゆとりのある社会)の建設を急げと指示したのは、中東の国民蜂起が貧困と格差拡大に由来すると分析したからである。確かに格差縮小は貧しい人びとの不満解消の有効策だが、その先の国民の渇望である精神の自由を、いったいどうするのか。豊かになれば、人間の本能は必ず社会の公正さや精神の自由に向かう。一党独裁を維持できる可能性は大幅に縮小する。それを嫌って、国民を力で押さえつければどうなるか。

人民解放軍の歴史を見ると、誰でも壮大な皮肉に気づく。89年の天安門事件や、2008年のチベット人弾圧、09年のウイグル人虐殺に見られるように、彼らは主として自国民に銃口を向け、武器なき市民を問答無用で撃ち、戦車で轢き殺した軍隊だ。

いま、そして近い将来、国民の蜂起に軍事力で対処すれば、人民解放軍は人民虐殺軍となり、中国共産党もろとも国民の支持を失うだろう。小康社会、力による抑圧、いずれにしても独裁専制支配は危機に直面する。そんなとき、リビアのカダフィ大佐が演説した。「最後の血の一滴が尽きるまで戦う」「戦車を繰り出し、たたきつぶした天安門事件のように(反体制運動を)たたきつぶす」(2月23日)。

国民の敵の正体を自ら語り尽くしたような「名演説」である。人類の歴史に残る許しがたくもこの不名誉なカダフィ大佐の政治のモデルとなってしまったのが中国共産党政権である。彼らが死に物狂いで打ち出す対策とその先の動きから目が離せない。

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